KOSS公開イベント「傷に触れ、記憶に触れられる──文学、身体、情動」を開催いたします。
一般公開イベントですので、学外の方もご参加いただけます。参加を希望される方は、下記のURLからお申し込みください(先着順・定員に達し次第申込を締め切ります)。
■ 概要
国民国家の歴史を語る集合的記憶からこぼれ落ちる言葉、身体の痛み、温かい涙の手触りは、ときに文学の言葉に宿ります。
それらは、見えざる被傷性に触れようとする者たちの語りの中につなぎとめられていることを、小説はときに私たちに教えてくれます。
例えば、崎山多美「月や、あらん」では、元「従軍慰安婦」の遺した言葉は、それを「私」に届けようとする過程で音そのものに変化してしまった「高見沢了子」の語りに、そして「高見沢」の遺言の呼びかけにさらされ、共に身を揺らす「私」の語りの中で生き延びていきます。
また、三枝和子の『その冬の死』には、米兵の暴力によって心身に深い傷を負い、さらにミソジニーと家父長制の暴力が絡み合う社会に棄却された千佳子が描かれています。彼女の身体は、占領期の集合的記憶の語りに忌避され、長らく隠蔽されてきたものです。
他者の痛みを本当に経験することが不可能であるにもかかわらず、文学を読むことや解釈することは、その傷に触れる手がかりの一つとなり得るのではないでしょうか。
本イベントでは、立教大学の佐喜真彩先生をお招きし、ポストコロニアリズム、フェミニズム、そして情動の視点から、崎山多美「月や、あらん」と三枝和子の『その冬の死』について語ります。それにより、集合的記憶から零れ落ちる「他者」の傷に触れ、それを語り、記憶し、継承することの可能性について考えます。
■ 日時
2024年12月21日(土)15:00-16:30 (14:45開場)
■ 会場(※対面のみ)
東京大学 駒場キャンパス18号館4階 コラボレーションルーム3
■ 参加申込(要事前申込・定員に達し次第締め切ります)
■ 言語
日本語
■ 情報保障等 ご参加にあたり情報保障やその他の配慮が必要となる場合は、komabasaferspace@gmail.comまで12/11(水)までにご相談ください。
■ プログラム
講演「生き延びたものたちの哀しみを抱いて──崎山多美「月や、あらん」」
佐喜真 彩(立教大学ほか非常勤講師)
研究報告「痛みの手触りに眼差しを──三枝和子「その冬の死」」
魏 韻典(東京大学総合文化研究科 博士後期課程)
コメンテーター
村上 克尚(東京大学総合文化研究科 准教授)
司会
井芹 真紀子(教養教育高度化機構D&I部門 特任助教)
■ ゲストプロフィール
佐喜真 彩
大学非常勤講師(立教大学ほか)。専門は戦後沖縄文学、ポストコロニアル研究、フェミニズム研究。一橋大学大学院言語社会研究科単位取得退学。博士(学術)。論文に「憑依される身体から感染する身体へ──目取真俊「群蝶の木」にみる戦後世代の戦争トラウマ」『女性・戦争・人権』(第21号、2022年)など。翻訳にアン・ツヴェッコヴィッチ『感情のアーカイヴ──トラウマ、セクシュアリティ、レズビアンの公的文化』(花伝社)がある。
◾️関連読書会(学内限定)
本イベントの関連企画として、崎山多美『月や、あらん』の読書会を12月11日(水)にKOSSで開催します。こちらは学内限定となりますが、ぜひご参加ください。
■ 企画・運営
魏 韻典(東京大学総合文化研究科博士後期課程・KOSS院生マネージャー)
祝 赫(東京大学総合文化研究化修士課程・KOSS院生マネージャー)
■ 主催
東京大学駒場キャンパスSaferSpace(KOSS)